キース・へリング展 アートをストリートへ
兵庫県立美術館 ギャラリー棟3階 ギャラリー|兵庫県
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生と性の宿題
正直よくわからなかった。人々に表情がないため、肯定的な絵なのか風刺している絵なのかすら判断できない。80年代アメリカについての知識が皆無なため文化的背景から作品内容を推し量ることもできない。結果キャプションを読むことになるが、「あぁ、この絵はこういう意味だったんだ」と答え合わせみたいになって悔しかった。できるだけ文字情報よりも作品そのものから受けるものを大事にしたいと思っているが、今回は勉強不足で自分なりの解釈がうまくできなかった。会場は最後のエリア以外撮影自由だったため、宿題のつもりでシャッターを切り続けた。持ち帰って、自分でどういう作品なのかを解釈できるようにするために。
と思っていたが、同行者(医療従事者)に聞くと、「生々しかった」という感想が返ってきて、仰天した。私がよくわからなかったのは知識不足というより感性の問題なのかと思った。その感想を踏まえると、確かに性や生など、現代社会では洗練化され隠されている欲望がむき出しに表現されていて、日常的に死と接している同行者はそれを強烈に感じ取ったのかもしれない。
以上のように、私にはよくわからなかったが、展覧会自体は楽しめた。日本画の展覧会ばかり行っていたため、板、チョーク、ツルツルの紙にマジック、蛍光塗料など、画材の違いが面白かった。そして蛍光塗料が使ってある絵画の部屋が暗くされていたり、音楽がかけられたり、作品が斜めに掛けて飾られたりと、展示の仕方も工夫されていた。お客さんも作品について口々に感想を言い合っており、良い雰囲気の展覧会だった(これは、私がお客さんの多い展覧会に行ったことがなかったからそう思ったのかもしれないが)。また、美術館は完成作品が展示されている場所なので、「この作品はどんなふうに描かれたんだろう」と、制作過程を見てみたいと思っていたが、最後のエリアで、キース・ヘリングが実際にチョークで地面に絵を描いている映像を見ることができて嬉しかった。駅に絵を描くというアイディアを思いついた、その足でチョークを買いに行ったというエピソードや、迷いなく地面にチョークの線を描いていく映像を見て、この軽やかさがまさにポップだと感じた。
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