特別展「法然と極楽浄土」
東京国立博物館|東京都
開催期間: ~
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『仰げば尊し』法然上人
桜が散って日も浅いのに夏日になりそうな休日、4月16日から開幕した特別展「法然と極楽浄土」をようやく訪問です。
休日でしたが夕方のせいか、来場者は大分余裕でした。来場予約も無くスルスル入場。
日本で半数近い信者数を誇る浄土仏教。その開祖である法然上人。
歴史授業では名前はほぼ必ずテスト出題されますが、教えや教義はふんわりスルーしているのが実情です。
自分の記憶でも親鸞とセットで名前しか最初は暗記してなかった。。。
ちなみに信者数について補足すると、信者数1位は【浄土真宗本願寺派・開祖親鸞】、2位が【真宗大谷派・開祖親鸞】、3位が【浄土宗・開祖法然】by文化庁『宗教統計調査結果』より。
このトップ3は大まか~な緩い括りで『浄土仏教』に相当します。
なので、日本で1番信者数の多い宗教の開祖・法然は歴史を経た現在も日本全国の僧が仰ぎ見る偉人です。
本展はそんな偉人法然に関わる国宝やら重文やらが日本全国から一挙に集結しており、あちこち訪問しなくても拝めてしまう稀少な機会。
時間も限られているのでいそいそ会場入りです。勝手な厳選注目作を数点ご紹介。
①国宝・綴織當麻曼陀羅つづれおりたいままんだら[展示期間:4月16日(火)~5月6日(月・休)]
中国・唐or奈良時代・8世紀 奈良・當麻寺蔵 縦横約4m
お目当て1位の織物曼荼羅。綴織~とは、絵柄を織り込んだ織物。絨毯に近い織物ですね。
浄土経典『観無量寿経』を織り出した縦横4メートルに及ぶ大曼陀羅で、當麻寺の本尊です。
壁面展示された作品、4mは大きいですね。首曲げて上の方まで見ようとしてたら首が痛くなってきました。いつもPCとかスマホとか下ばっか見てるから。。。
8世紀の中国=唐か奈良時代の日本で作られたとされ、言い伝えでは貴族の姫が蓮ハスから採った糸を用意して五色に染め、織り上げたものと言われ鎌倉時代以降、広く信仰を集めたそうな。
実際にはハスの糸ではなく絹糸で織られ、織物の部分は多くが失われて絵の具で描き補われていますが、とにかく貴重で絵も美しいです!
ただ劣化はいかんともしがたくて、ほぼ茶色なのが残念。復元画像は何度も見てるので勝手に脳内変換します。
基本的に浄土宗では「曼陀羅」、真言宗では「曼茶羅」と記すのが一般的なので、大日如来中心の密教「曼荼羅」ではなくて、阿弥陀如来を中心に菩薩様達が点在する極楽浄土の世界が織られているのも注目点。
②国宝・阿弥陀二十五菩薩来迎図あみだにじゅうごぼさつらいごうず[展示期間:前期]
鎌倉時代・14世紀 京都・知恩院蔵
2019年から始まった修理後初の公開!これも美術の教科書とかで見ていた超有名作品です。
修理で5層ある裏打紙の肌裏紙(はだうらがみ:本紙の裏に直接貼る補強紙)が交換され、ちょっと黒っぽくてくすんでいた山水表現がより鮮明になっています。
あと、本紙の周りに取り付ける「表装裂」も新調したとの事で、なんだか来迎の仏様のようにツヤツヤピカピカな仕上がりに。
③国宝・山越阿弥陀図やまごしあみだず
鎌倉時代・13世紀 京都・永観堂禅林寺蔵
阿弥陀如来様が、山の間から上半身を表す図ですが、・・・見た瞬間頭の中で某漫画『◎撃の巨人』が浮かんでしまいました。サイズ感が。
平安時代の後期に、臨終の際念仏を唱えると阿弥陀如来様が迎えに来るという「来迎」思想が流行し、その様子を表現する仏像や仏画が描かれたそうです。
山越阿弥陀は鎌倉時代以降に現れる来迎図の様式のひとつで、山の向こう側(=極楽浄土)から阿弥陀如来が姿を現しています。
画面左上に大日如来を表すサンスクリット語(梵字)「阿」が表されています。梵字は密教=真言宗ではよく使われる表現。
見返り阿弥陀で有名な永観堂禅林寺は、当初真言宗の道場として出発しているので、その影響なのかな。。。と思います。
この他、香川県から「仏涅槃群像」江戸時代、「法然の肖像彫刻」鎌倉時代、変わった所では涅槃の釈迦の身体を水晶で表していたり、法然の死後に彼を慕って教えを日本全国に広めていった門弟たちがそれぞれ造らせた阿弥陀如来像、師匠と仰ぐ法然の坐像等が岡山や福島、久留米(福岡)、常陸(茨城)と津々浦々から集結しています。
つくづく法然て慕われていたというか、高僧となる弟子たちの指標となっていたんだろうな。。。と実感します。
ちなみに法然は高徳な僧に朝廷から贈られる大師号を1711年以降、50年ごとに天皇より贈られていて、現在8つの大師名があり日本史上最多でダントツです。
次点は黄檗宗の開祖隠元が3つ。空海や最澄は1つだし、独壇場状態ですね。
何故法然がこうもコンスタントに称号を贈られていたのかは不勉強で謎ですが。
法然の死後に末広がりに拡がった親鸞をはじめとする浄土宗の宗派。
教義というか、細かい違いはちょっとついていけないので、こういった展示の機会をきっかけに再度自分の家の仏教について気にしてみるのも良いのではと思いました。
ちなみにグッズにはなぜか温泉のケロヨン桶のようなものや銭湯(?)で使うようなタオルもあり、なんだかポップというか、展覧会からはだいぶ重みの消えた遊び心のあるラインナップが並びます。来迎図のTシャツも渋いというか味があります。
開宗850年の大きな節目を契機に、浄土宗各派の至宝が集まる決定的な展覧会、秋から京都と九州に巡回予定。
日本仏教のカリスマ法然を掘り下げる絶好の機会です。
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